おご し挈よっに一一 = ロった。 ろいろとあるような気がする。その力を使いたいんだよ。傲 「友情にはそれだけの大きなゆとりはないよ」 り高ぶった心を戒律の下にねじ伏せているシャルトルー会修 「ねえきみ : : : 怒らないだろうな、訊きたいことがあるんだ道僧、人から《頼りにしてます》と言われるような人間が羨 ましい。兵士が羨ましい いやむしろ、誰も羨んでなん 「言ってみろよ」 、よ、ナど、内心で猛り狂っている感清が息苦しくてたま 「きみを怒らせたくないんでね」 らんので、なんとかそれを制御したいのさ。それはばくの内 、いの蒸気だ、、、 「訊きたいことがあるくせに腹の底にしまっておいたら、も ノューシュー音を立てながら吹き出すかもしれ ポエジイ っと怒るそ」 んそ ( それが詩情だ ) 、。 ヒストンや車輪を動かし、さらに機 「いったいどうなんだい、きみはローラに : : : 欲望を感じて関を破裂させるかもしれんそ。いちばん見事に自分を表現で きる行為ってようなものが時おり思い浮かぶんだけど、きみ、 るのか ? 」 とっぜんべルナールはひどく深刻な顔つきになった。 それは何だかわかるかい ? それはだな : : : ああ ! 自殺な 「きみだから打ち明けるんだが : : 」と彼ははじめた、「じんてしつこないことは、自分でもよく承知している、しかし、 ドストエフスキイ曰カラマーゾフ つはね ! ばくのなかに奇妙なことが起きてるんだ。 , ) の気持ち 彼女をドミトリ・カラマーゾフ ( の兄弟いのなかに登場する長男 おば 知ってから、まるつきり欲望がなくなったんだよ。きみも憶は手にとるようにわかるな、彼が弟に向かって、人間は熱狂 爆発によって えているだろうが、昔のばくは、街で出会ったたくさんの女によって、単なる生命の過剰によって : たちに、一時に思いを焦がしたものだ ( おかげでどの女も選自殺することもあるってことがわかるか、とたすねるときの ドミトリの気持ちがね」 ばないでいられたんだけど ) 。それなのに今は、彼女と違っ ベルナールの全身は異様な光輝を発散していた。この男は た型の美しさに心を動かされることはないし、これからも絶 まなぎし 対にないだろう、彼女の額しか、唇しか、眼差しか絶対に好なんと見事に気持ちを表現しているのだろう ! オリヴィエ はなんだかうっとりして友人の顔を眺めていた。 きになれないと思う。ばくが彼女に抱いているのは崇敬の念 っ だ、彼女のそばにいると、肉欲にまつわるあらゆる考えが不「ばくだって」とオリヴィエがおすおずとつぶやいた、 の自殺する気持ちはわかるさ。でもそれは、あとにつづく全 敬に思える。ばくは自分を勘違いしていたんだな、根はとっ ても純潔なんだな。ローラのおかげで、本能は清められ、高生活が色あせてしまうほど強烈な歓喜、これで十分だ、おれ : と考えたくなるような歓 は満足だ、これ以上はとうてい められた。自分のなかにはまだ使っていない大きな力が、い いちどき
ごたらしかったが、 それでも羨ましいな、ああいう : たちは骨惜しみをしていると思うね。一篇の小説を書くにし ては、ばくはまだ十分に他人の生活を知っちゃいないし、ば ベルナールは最後まで言い終えなかった、著名な現代作家 アレクサ 寺まうんざりだ、十二音の名前をひとりあげようとしていた矢先、あまりにもたくさ く自身の人生体験も十分じゃない言。 ンド一フン ッ 綴詩句はばろばろに使い古されてしまっているし、自由詩はんの名前が浮かんでちゅうちよしていたのだ。彼は肩をすく ジ いまばくに満足のゆく唯一の詩人、それめてつづけた。 体をなしていない はランポーだ」 「ばくはね、漠然とながら自分のなかに、異常な渇望、波の 「まさしくそれだよ、ばくがマニフェストのなかで述べたの大きなうねりのようなもの、さまざまな衝動、えたいの知れ ない動揺を感じている。しかし、それが何であるか理解する 「それじゃ、ばくがくりかえして一一一一口う必要もないわけだ。ほ まい、観察するまいとさえしてる、そんなことをして、元も んとだよ、きみ、ばくは今後ものを書くかどうかわからん。子もなくしたらいやだからな。ついこの間までばくはたえす 時どきこんな気がする、書くことが生きることを妨げるんじ自己分析をしていた。しよっちゅう自分に語りかける習慣が あったんだよ。いまじゃもう、しようたって、できやしない ゃなしか、一一一口葉より行為によるは , つが、自己表現はうまくい や くんじゃないかってわけさ」 この奇癖がとっぜん止んでしまった、まったく気がっかぬう 「芸術作品ってのは持続する行為だぜ」とオリヴィエは、おちにね。この独白、われわれの先生の言葉を借りればこの すおすと言ってみた。だがベルナールは聞いていなかった。 《内的対話》には、自己を両分化する作用が含まれていたと きようたん 「ばくがランポーについていちばん驚歎している点は、生思うけど、それができなくなったのだ、自分以外の誰かを、 自分以上に愛しはじめてからは」 活のほうを選び取ったことだよ」 「彼は生活をだいなしにしたぜ」 「ローラのことを話したいんだろう」とオリヴィエが口をは さんだ、「じゃ、 っこうに愛情が冷めてないのかい ? 」 「挈ごっかし ? ・」 「それどころか、愛清はつのるばかりさ」とベルナールは答 「そうだよ、きみ : : : 」 いやでも燃え上がるか冷め 「他人の生活ってものは、外からじゃ判断できないそ。まあえた、「同じ状態でいられない、 しいや、かりにランポーが生活の落伍者だったとしよう、不るかどちらかだ、これが恋の本質だと思う、そこが友情と違 そんな彼のう点だな」 運、貧困、病苦などの辛酸をなめたからな : 生活だって、ばくには羨ましいよ、そう、最期はあんなにむ「しかし友情だって冷めることはあるぜ」とオリヴィエが悲 、つらや
言ってしまわなければならぬ。 くはバッサヴァンと馬が合いそうもないな」 パッサヴァンから万事 「そうなんだ、家族に言っておいたのより、ばくたちは早く 「だって、主宰するのはばくだぜ , 帰って来たのさ。今晩〔。アルゴノート』の連中が宴会を催すを任されているんだ」 んだ。パッサヴァンは是非とも出席したがっている。われわ「それに、なんでもかまわんものを寄稿する気には、とうて れの新しい雑誌と先輩の雑誌との仲がうまくいき、ライヴァ いなれないな。ばくは《なんでもかまわん》ものなんか書き ル関係にならないようにと、彼は願っているんだよ : みも来るといいんだけどな : : : エドウアールを連れて来たら 「《なんでもかまわん》と言ったわけは、きみなら何を書い どうだろう : : 絶対に《なんでもか : 。招待者だけなので、宴会そのものに出席するたって立派なものにきまっているし : のはぐあい悪いけど、宴会の直後ならかまわんよ。みんなタまわん》ものになるわけがないと、承知した上でのことだ 、リのスフロ街にあった文学力フェ、十九 ヴェルヌ・デ - ュ・バ ンテオン 世紀末から二十世紀初頭にかけて有名だっ オリヴィエは二の句がっげす、しどろもどろになっている。 た ) の二階の広間に集まっている。「アルゴノート』の主な編 集同人、それに「アヴァンギャルド』の寄稿予定者も何人か友人が自分のかたわらにいるという実感がなければ、あの雑 来るはずだ。ばくらの雑誌の創刊号はほば準備完了している、誌はなんの興味も引かなくなってしまう。 っしょに立〈箍坦に ところできみ : : : なぜ原稿を送ってくれなかったんだい ? 」 デビューするというあの夢は、美しかったのに。 いくぶんつつばね ま、 ( ま / 、に、もよ / 、、わ 「それにきみ、自分が何をしたくないか。 「なんにも用意してなかったからさ」と、 るようにベルナールは答える。 かりかけてきたが、これから何をするかはまだはっきりして ないんだ。今後ものを書くかどうかさえ、はっきりしていな オリヴィエの声はほとんど歎願の調子を帯びる。 「目次のばくの名前のかたわらに、きみの名前を記入してお いたんだよ : この発言にオリヴィエは仰天している。しかしベルナール 必要なら、もう少し待ってもいいぜ : 。きみは寄稿の約束はつづける。 式なんでもかまわん、ともかく何かを : っ 「ばくにも楽々と書けるようなものだったら、食指は動かん をしてくれたも同然だったじゃないカ ベルナールはオリヴィエを苦しめるに忍びないけれども、 な。出来合いの名文ってやつが大嫌いなわけは、そんなもの かたくなになっている。 ならばくにだって書けるからだよ。なにも好き好んで困難を きみ、すばり一言ったほ , つがしし 、と思うんだ、ば求めているわけじゃないけど、じつを言って、今日の文学者 たんがん